- 六 押入れ 窓を開けると蝉の声が入ってくるので、閉めたまま片づけている。四十九日が済んで、この家のなかで急ぐ理由はもう何もない。それでも今日じゅうに押入れの上段だけは終わらせようと思っていた。 二〇二六年八月八日
- 五 半分 八月の終わりに部屋を引き払うことになって、冷蔵庫の中を出した。 二〇二六年七月二十八日
- 四 西陽 引っ越しの段ボールは三つしかなかった。 二〇二六年六月十七日
- 三 連絡船 朝の便に乗る。缶の蓋を開けて、飴玉をひとつ取る。レモン味。口に入れると酸っぱくて目が覚める。 二〇二六年六月十六日
- 二 手放したものは 街の灯りが一つ消えた夜に、みどりは空き缶を踏まないように歩いた。今夜だけは、音を立てたくなかった。 二〇二六年六月十三日
- 一 靄の中で 朝靄の中で、あの人は別の名前で呼ばれた。 二〇二六年六月十二日